インターネット加湿器

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インターネットに平和をもたらす剣

たまには運動しないとなと思い立ち、今日は散歩に出かけました。私は散歩の中でも知らないところを歩くのが好きなので足の赴くまま適当に歩きました。どうせスマホ持ってるからなんとかなるしなと思い好き放題歩きました。

30分近く歩いた辺りでぽつんと石碑が立っているのが見えました。近づいてよく見てみると石の台座にひどく錆びた剣が刺さっている物でした。何の変哲も無い住宅街からは完全に浮いた代物で、それ故に周りの家すべてを背景化していました。突き立てられた剣は主人公のよう私の目を惹きつけました。

「抜けるかどうか、試してみるかい?」

驚いて振り向くと、フードを目深にかぶった老婆が立っていました。

「剣が持ち主を選ぶ。剣を振るうに値する人物ならば自然とその腰に剣をはくことになるのさ」
「はあ」

ちょっと前に錆びた剣やライターを新品同様に磨き上げる動画を見てから錆びた剣は欲しいと思っていたのでまたとない機会ではあるのですが、この老婆は一体誰なのでしょうか。知らない人それも、老人が若者に声をかけるなんてめんどくさいことの前触れでしかないはずなのです。なぜなら老人は若者を小馬鹿にし、若者は老人を憎む。そんな怨嗟のウロボロスが人類には運命づけられているからです。

まあ、フードを深くかぶっている辺りそのくびきから逃れた存在なのかも知れません。普通の老人はフードで視界を制限しないからです。

それならまあ、と思い柄に手をかけます。すると角栓を抜く動画のようにスルリと剣が台座から抜けました。

「お前は剣に選ばれた。まさしく、お前が持ち主だ」

こんな錆びた剣一本で何ができるんだと思っていると、みるみる錆が落ちていき剣は本来の輝きを取り戻していきます。刀身に曇りなく、日の光を浴びて光っています。

「その剣は悪を滅する物。魔を、bioに『クソリプを書きます』などと書いてそれを免罪符かのように掲げ、知らないアカウントにクソリプを送り続けるアカウントを切り伏せる物」

それなら、できる! どうせあんなやつ直接ぶん殴られないことが確定しているからそんなことしているに違いないんだから、この剣があればインターネットの平和に近づくかも知れない。

そう思って顔を上げると、老婆の姿は影も形もなくかき消えていた。

そのあと私は銃刀法違反で逮捕された。

プリン味のエナドリに気をつけろ

私はエナジードリンクが好きなのでよく飲みます。なんか調子悪いなと思ったときにとりあえず飲んだりするのは多分意味が無いし身体に悪いのになかなか止められません。かといって飲んでも調子が悪いのは治らないので結局何もせずに寝たりします。エナジードリンク飲んだ後に寝ようとすると(心臓が痛、痛……い? それとも拍動が強くなってるだけ?)となって寝にくいの止めたほうがいいんでしょうね。

今日は調子悪くはないけど、食べたいものがないから昼ご飯にエナジードリンクを飲もうかなと思ってコンビニに行きました。ずらりと飲み物が並ぶショーケースの前に立つと見慣れないパッケージの缶が新たに入荷していました。どぎついピンクの缶に「思わず歌い出す、そして眠る。君はもう体験したか、衝撃を」とかなんとか意味わからんポエムが書いてある辺りエナジードリンクに間違いありません。飲んだ後に眠るのは珍しいなと思いましたがカフェインをとった後に昼寝することは割と効果的らしいですし私の使い方にもぴったりです。肝心の味は「プリン味」とあります。エナジードリンクとしては初めて見る味です。私の心は完全に決まりました。

家に帰ってきたらさっそくプルタブを開けます。プシュッという小気味良い音とともに薄ピンク色の液体の飛沫が飛びます。飲んでみると妙にしょっぱくて酸味と旨みと雨上がりのマンホールを舐めたときの味を混ぜたような、とにかくお世辞にもおいしいとは決して言えない味がします。企画部の人間全員がプリンをこの味だと思って育ってきた、やばい会社の商品掴まされたかと思い後悔していると徐々に頭に霧がかかってきました。視界がかすみ、意識がローラーで塗りつぶされるように遠のいていきます。

気づくと時刻は午後5時、誰に見せても恥ずかしくない、立派な夕方です。改めてエナジードリンクの缶をよく見てみると原産地:3ばんどうろ とあります。どうやらポケモンの方のプリン味だったようです。

眠りこけていた間に私の額にはマジックで「乾坤一擲」の文字が書かれていました。

破壊の精霊ってすごいね

今日は昼ご飯にインスタントラーメンを食べることにしました。水を入れた小鍋をIHコンロに乗せてスイッチを押します。ごぽごぽと水が沸騰してきた辺りで乾麺を入れます。湯気が上がって台所中がしっとりしてしまうなと思い、換気扇をつけようとスイッチに手を伸ばしたところで「待たれい」という声がどこからともなく聞こえてきました。

顔を上げると湯気が人をかたどっていました。湯気が口を開きます。

「余を呼び出したのは汝か?」
「違います」
「そこでボケるでない。ここには汝しかいないではないか、そんな何のヒネりもないボケは仲間内のノリの外では通用せんぞ」

クソだりー湯気です。こんなやつなおさら呼び出すわけがありません。呼び出したのが自分ではない事を丁寧に説明します。

「なんとっ、しかし余はたしかにこの地に呼び出された。いったいどうしたことか・・・・・・」
「そうは言っても、ラーメン作ってるだけですし」
「ふむ、余は破壊を司る精。何かが高速で衝突する音が子守歌で何かが軋んではじける音が心地よい目覚ましとなる者のもとに現れ、そのものが潜在的に抱いている望みを叶える」

精霊の話を聞きながら私の顔はどんどん青ざめていきます。めちゃくちゃに心当たりがあるからです。この土日は陸橋にトラックがぶつかる動画とプレス機でファービーが潰される動画ばっかりを見て過ごしたからです。明らかに破壊の精を呼び出す条件に当てはまっています。このままでは私が無意識に抱いている願いが叶えられてしまいます。良い願いであってくれ!

「まあ、汝が余を呼び出した者かどうかは正直そんなに関係ない。余を呼び出した段階で、余を呼び出した者の願いは叶っている。世界がどう変わったか楽しみだな」

そう言い残すと破壊の精はかき消えました。

(全国のドナルドマクドナルド像が殺人ピエロとなって人を襲いまくるとかは止めてくれ、セブンの揚げ鶏の大きさが4倍になるとかの願いが叶っていてくれ)と思いながら変化を確認するために外に出ます。

特に変化は見つかりません。悲鳴も歓声も聞こえてきません、一体どんな願いが叶ったのか。とはいえ、どこに起こるかもわからない変化を見つけるのなんて現実的ではありません。今すぐ探すのは諦めて、たまたま見つけるのを待とうかと思ったとき、胴体が3mはあろうかというダックスフンドが飼い主に連れられて動物病院へ入っていくのが見えました。どうやら私は心の奥底でダックスフンドの胴体がもっと長くなって欲しいと思っていたようです。

リステリンの導き

今日は使っていた歯磨きが切れてしまったので買いに行きました。

雨の中最寄りの薬局につくと普段使っている歯磨きのところだけ棚がぽっかり空いていました。どうやら売り切れてしまったようです。もしかしたら裏にはまだ在庫があるかも知れないと思い店員さんに声をかけました。

「すみません、リステリンの白って在庫ありますか?」
リステリンの白ですね、大きい方と小さい方どちらをお探しですか?」
「大きい方で」

そう答えると店員さんは営業スマイルをふっと取り下げ、「ではこちらへ」と言って店の奥へと歩いて行きます。

慌てて追いかけると店員さんは私のことは意に介せず、無言で店のバックヤードへ入っていきます。ここで待っていろということかと思い立ち止まると、店員さんはこちらを振り返って手招きをします。なんか変だなと思いつつも後をついて行くとほの暗い蛍光灯の光を浴びて鈍く光る大きな扉の前に着きました。どうやらエレベーターのようです。促されるままエレベーターの中に入ると、店員さんは下とだけ書かれたボタンを押して扉を閉めました。するとエレベーターは下へ向かい始めます。全くといっていいほど音はせず、かすかに感んじる扉からの隙間風だけが、エレベーターの高速移動を物語ります。

普段の生活では考えられないほど長い間、エレベーターは降り続けます。無言というのも何だとは思いましたが、店員さんはさっきまでの人当たりのよさがどこへ行ってしまったのか、達人のような空気を纏っており話しかけるのをためらってしまいました。無音の箱は地下へと向かいます。

長い長い沈黙の後、エレベーターは減速を始め、目的地に着きました。扉が開くと何百人もの人が大きな空間に集まっています。

ここでやっと店員さんがその重たい口を開きました。

「着いたぞ、ここが第302期ハンター試験の会場だ」

どうやら私の「リステリンの白、大きい方で」という回答はハンター試験会場に案内してもらうための合い言葉だったようです。日常的に使う言葉を合い言葉に設定すな!

明日は二次試験なので今日はここまでにして早めに寝ます。

水鉄砲を持ったおじさんと散歩しました!

今日散歩をしているとデカめの水鉄砲を持って歩いているおじさんを見つけました。何してるんですか、と声をかけるとおじさんは水鉄砲のタンクを指さして言いました。

「これね、食用色素、水に溶かしたの」

「何に使うんですか?」

「んん~、わかりやすく言うと縄張り争いかな」

(えっ、任天堂のやつじゃん!)と密かにテンションが上がっていると、おじさんがシュコシュコとポンプを圧縮し始めました。そして民家のベランダに干された白Tシャツに照準を合わせると色水を発射しました。見事にTシャツが青色に染まり「上手いでしょ」とおじさんは得意げです。その後もおじさんはこの前受けた健康診断の話をしながら、その片手間に白Tシャツを見つけると水鉄砲で青く染め上げました。

しばらく歩くと赤い染みのできた白Tシャツがベランダにかかっているのを見つけました。それを見つけるとおじさんは「今回はここまでかな」と言って、来た道を引き返しました。慌ててそれについて行くとおじさんの額に赤いレーザーサイトの光が当たりました。おじさんは慌てて左によけましたが、それにあわせてレーザーの光も左に動きおじさんを打ち抜きました。「マンメンミ」という断末魔を残しておじさんはアスファルトに倒れ伏します。見事なドラッグショットでした。

ちょっと待ったらリスポーンするかなと思って待っていると物陰から別のおじさんが姿を現しました。そのおじさんは腰に巻いたウェストポーチから白Tシャツを取り出すと道路に流れた血でTシャツを染めました。おじさんは思ったより強大なものと戦っていたのかも知れません。

タクシーに乗りました!

今日はバイト(ゴー☆ジャスの心臓をタピオカに加工する工場)だったのですが、ぼーっとしていたら家を出なくてはいけない時間を大幅に過ぎてしまっていました。仕方ないのでタクシーで行くことにします。大通りに出てタクシーを捕まえ、行き先を告げました。走り出してしばらく経ったとき、運転手の人がジャケットの内ポケットから鈍く銀色に光る何かを取り出しました。スキットルです。運転手はスキットルの蓋を開けると中の液体をクイッと流し込みました。

「ちょっと、何飲んでるんですか! 飲酒運転じゃないですか!」

「ああ、これね実は中身ジュースなんだ。カルピスの原液」

どうやらお酒ではないようですがカルピスの原液を飲む人はそれはそれで怖いのでその場でタクシーを降りることにしました。

結局バイトには遅刻して、あわやクビというところまで行きましたが、工場長の心臓をタピオカにしてなんとか事なきを得ました。

胃の中で相殺を起こしました!

夜ご飯を食べようと思って冷蔵庫を開けたら中に入っている固形物が1年前に賞味期限が切れた木綿豆腐しかありませんでした。さすがにこれだけではお腹は満たされないのでコンビニまで食べ物を買いに行きます。私は甘い物が好きなのでまず4個入りのアソートドーナツを手に取りました、それだけではタンパク質が足りないのでサラダチキンも買うことにします。家に帰るとまずサラダチキンを食べます。味が単調なのでぼーっとしながら食べているといつの間に食べ終わっていました。続いてドーナツを食べます4つで1400kcalぐらいあるので2つ食べた辺りでお腹はいっぱいになってきましたが、私は食べ始めたものを後にとっておくことができないので勢いのまま4つ食べきりました。これは食べ終わった後きついかもなーなんて思っていましたが、最後の一口を食べきったところで満腹感がすっと消えてしまいました。さっきまで感じていた満腹感はどこへ行ってしまったのでしょうか。その謎を探るべく亀甲に火を入れ、生じたヒビを見ることにしました。その結果、世の人たちからサラダチキンに託された痩せたいという気持ちとアソートドーナツに託された太りたいという気持ちが胃の中で打ち消し合って無になってしまったからだということがわかりました。こんなこともあるんですね。