インターネット加湿器

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裏路地のたこ焼き屋台

駅から家までの路をぽてぽてと歩いているとどこからかソースのにおいがしてきました。どこかでたこ焼きの屋台が出ているのかなと思うと急にたこ焼きの口になってしまいました。当たりを見渡しましたが見える範囲に屋台は見えません。しょうがないので鼻を頼りに屋台を目指します。

気づけば路地の奥深いところまで来ていました。ビルの壁にたくさん取り付けられた室外機から出る風が香りを運んでいるのか、結構遠い所に屋台はあるようです。とはいえソースの匂いは間違いなく強くなっているので方向は間違ってないはずで……

「よお。たこ焼き、買いに来たんだろ」
後ろから急に声をかけられて、私は文字通り飛び上がりました。振り返るとビルの壁に埋まるようにしてカウンターがありました。鉄板に青のり、船型のプラ容器、間違いなくここはたこ焼き屋台です。声の主は妙に眼光の鋭い角刈りのおじさんでした。
「いくつ?」
「じゃあ、2パックで」
「焼き方は?」
たこ焼きの焼き方なんて気にしたことがありませんでした。カリカリかふわふわか選べるということでしょうか。
カリカリにしてください」
「おう、ちょっと待ってな」
そう言うとおじさんは奥に消え、すぐにパックに入ったたこ焼きを持ってきました。
「じゃ、6380円ね」
たっけ~。たこ焼きにしてはあまりに高すぎます。でも店主のおじさんには有無を言わせぬ凄みがあります。ぼったくりたこ焼き屋台だったのかもしれません。ここはもうおとなしく要求された金額を払うしかないのかもしれません。カツアゲと違ってたこ焼きが手に入るだけましなのかもしれません。「はいちょうどね。ウチのたこ焼きはかみ砕かずに舌で割るようにして食うんだぜ。じゃそれ早くバッグにしまって」

言われたとおりにして屋台を後にします。
舌で割るようにして食べる? そんな食べ方始めて聞きました。研究の末にたどり着いた一番美味しい食べ方なのでしょうか。もしかしたら店主のおじさんがぶっきらぼうだったのもたこ焼き一筋な頑固オヤジだっただけで怖い人ではなかったのでしょうか。たこ焼きにしては高すぎる値段も試行錯誤の上に立つ究極のたこ焼きだからなのかもしれません。
そう考えると俄然楽しみになってきました。自然と足早になります。

家に帰ると言われたとおり、噛まずに舌で崩すようにしてたこ焼きを食べてみることにしました。しかし、特段美味しくありません。むしろ舌で割る食べ方をするためにたこ焼きがぬるいのでその分まずいです。肩すかしを食らったような気分です、とりあえずもう一つだけ同じ食べ方で食べて、それでもダメだったらレンジで温め直そう。そう考えてもう一つたこ焼きを口に入れ、舌で生地を割るとプラスチックのような感触がしました。驚いて口に中のものを出すと、それはまさしく小さなジップロックつきのポリ袋でした。中にはSDカードが入っていました。一体これは? とにかくこんなモノがたこ焼きに混入するでしょうか? とにかくSDカードの中身を確認してみることにしました。パソコンのスロットにSDカードを入れて中身を読み取るとチンパンジーが太めの棒でビッグマックをペースト状になるまで叩く動画が一本だけ入っていました。

マクドアンチ過激派の店主が営んでいるたこ焼き屋台だったみたいです。本当に何?

スマホで水切りをするお嬢様

寒風の吹きすさぶ中、私は気づいたら河川敷に来ていた。二月も下旬でじきに春が来る。冬が最後の力を振り絞った寒波は人出をまばらにした。

灰色の空では散歩してもたいして気は晴れない。それどころかこれといった防寒をせずに出てきたのでむしろ寒さが身に染みる。それもこれもあのにっくき就活などというモノのせいだ。私には特段やりたいことがない。なので志望業界も決まらないし、就活にやる気も出ない。だって、社会の歯車になるために努力しろと言われても、したくないに決まってる。ふと全部が嫌になったので、全部ほっぽり出して家を飛び出した。採用情報ページのタブも薄っぺらな自己啓発本も履歴書も、全部そのままにして。

そんなすべてがどうでもよくなった私のジーンズのポケットにはスマートフォンが突っ込まれている。エントリーした企業から何か連絡があったらと不安がよぎって持ち出すことにしたのだ。結局全部どうでもよくなんかなっていない、私は破天荒にもなり切れなかった。

まっとうに生きられるほど真面目じゃないし、かといってはみ出し者として生き抜くためのしぶとさもない。このままどっちつかずのまま、どうしようもない生を送るのだろうか。それは嫌だけど、じゃあどうすれば?

悶々と考えを巡らせながら歩いていると、ポチャンと水音が聞こえた。その方向に目をやると、それは見事なお嬢様がいた。アニメでしか見ないような金髪縦ロールで、高級そうなコートに身を包み、すらりと伸びた手足を存分に使って水切りをしていた。お忍びなのかおつきの者はおらず、それどころか自分の肩にカバンをかけている。

お嬢様も水切りをするんだなあと親近感を覚え眺めていたが、どうも様子がおかしい。彼女が勢いよく投げる石はよくて二回、ほとんどは一回も跳ねずに水しぶきを上げて川に沈んでしまうのだ。下手な投げ方はしていないがどうしてだろうと思い、よくよく見ると彼女が投げているのはどうも石ではない。全部似たような、ひらべったい板状のなにか。そう彼女が投げていたのはスマートフォンだった。

それに気づいたとき、私はなんだか胸のすく気持ちがした。きっとお嬢様にはお嬢様なりの苦悩があるし、嫌気だって差すのだろう。そしてため込んだストレスでどうにかなりそうだった彼女は後先顧みない行動に出た。彼女にはそれができたのだ。なんてクール。

上流階級には上流階級なりのわずらい事があって私たちと同じかあるいはそれ以上に堪えるのだろう。わかる、わかるとも。私は川べりにおりてスマホを取り出した。彼女の行動力への感銘と生まれ変わった私への期待を込めて、私はスマホを勢いよく川面へ投げた。ほぼ同時に彼女もスマホを投げ込み、二つのスマホは仲良く五回ほど跳ねたのち川に沈んだ。

どうやらさっきのが最後のスマホだったらしく、彼女はカバンの口をしめた。そして鈴のような声でこう言った。

「お~ほっほっほ! 貧乏人には到底できないスマホ水切り、これこそやんごとなき身分のための遊戯ですわ~」

私は急いで川に飛び込んだ。川の水はひどく冷たかった。

グーでドラミングをする男

寒さで目が覚める。随分と背中が痛い。どうやら床で寝ていたようだ。のども埃っぽいし、寝るのはベッドに限る。そこまで考えて異変に気付く。天井があまりに高いのだ。暗さもあるだろうが、見えないというのはあまりにおかしい。そう思って体を起こすと、手のひらに砂利が食い込む感覚がした。

ここは私の部屋ではない。何か広い洞窟のような場所だ。夢遊病だか、誰かに運ばれたか知らないが早く出口を探さなくては。そう思って立ち上がったところ、向こうから人影が近づいてきた。

その男はこの寒さなのに平気な顔で半袖を着ており、髪は短く刈り上げていて歯は不自然なぐらい真っ白だった。歯が白すぎる人間は信用ならないというのは物語の鉄則だが、一人でいるのは心細いため結局私は彼と行動を共にすることになった。

「君は何かスポーツはやっているかい?」
長い沈黙を見かねてか彼が口を開く。
「僕はアルティメットタックボールとスポーツチャンバラをやっているよ」
知らない競技だ。
「体を動かすのは何にも勝る娯楽だからね」
そういう人もいるだろう。

やはりこいつは信用ならないのかもしれない。あまりにも歯が白すぎる。彼の歯で反射した光が目にちらちらと入ってきて話の内容が全く理解できなかった。

するとその時、彼の歯が反射する光にひかれたか、イノシシのような獣が私たちの前に現れた。体躯は非常に大きく、鼻息荒くよだれを垂らしている。専門家ではない私にも危険な状態にいるということだけは分かった。

「こういう時は変に下手に出てもいけない。威嚇して自分を大きく、強く見せることが大事なんだ」
そういうと彼は両手をグーにして自分の胸をたたき始めた。そう、彼はグーでドラミングをしているのだ。

そこで私は確信した。彼を信じてはいけない。グーでドラミングをする人間だけは信じてはいけないのだ。私は彼に気づかれないよう、息を殺して大きめの石を持ち上げると勢いよく彼の後頭部に振り下ろした。

「どうして……」
「グーでドラミングをするようなやつは信頼できない」
「理解に苦しむな……別に……いいじゃん」
そう言い残して彼は物言わぬ死体となった。
獣は一連の流れを見てドン引きしたのかすごすごと引き下がっていった。

しばらく進むと出口につき、私は元の日常に帰ってきた。やはり、グーでドラミングをする人間は信じていはいけなかったのだ。

ストレッチ

家にこもりがちな現代人はなにかと体が凝る。座ってインターネットしているか寝転がってインターネットをしているかの生活をしている私はその例にもれず体がバキバキだ。背中は丸まっているし、首は動かすたびにパキパキいうし、多分足の長さは左右で違う。

そんな状態がずっと続いているので当然体調が悪い。具体的なことは言えないが、このままでは確実に体のどこかに取り返しのつかない不調をきたす。そう思ってからはなるべく散歩をしたり、ストレッチを日課にしたりしてなんとか体を動かそうとしている。

今朝は特に冷え込んでいた。昨夜は雪が降っていたし、カーテンを閉め忘れて寝たようだからそれも納得だ。冷え切った部屋の空気に身をさらしたくはないが意を決して布団をはねのけ起き上がる。寝ている間に固まった体をほぐすため大腿四頭筋ハムストリングスを伸ばす。じわじわと血がめぐるような感覚がして気持ちがいい。続けている間に体の柔軟性が上がったのか、最初のころは届かなかった所にも手が届くようになっていることに気がつく。目に見えて上達が感じられるとがぜんやる気が出るもので、私は全身の筋肉を伸ばしに伸ばした。そして、伸ばしすぎた。

気づいたときにはもう遅かった。私の体は伸びきって、総距離が4万kmに達していた。地球一周と同じ長さだ。まずい。このままでは……このままでは、間寛平が来てしまう。アースマラソンのコースと勘違いして、間寛平が来てしまう。それはとても困る、なぜなら知らない人だから。私は間寛平についてアースマラソンをしていた人という情報しか持っていない。しかもウィキペディアで調べたら芸人らしい。知らない芸人に体の上を走られることほど怖いものはない。せめてネタだけでも調べておくかとウィキペディアを読み進めると「主な持ちネタ・ギャグ」の欄にたどり着くが、文字起こしされたネタは血の気が引くほどつまらなかった。それは仕方のないことだ、流れとか声の調子とかいろいろなものがそぎ落とされてただの情報になり果てたネタがつまらないのはしょうがない。文字起こしされて面白い小島よしおの方が珍しい。

ふいにつま先に何かが触れた感覚がした。ああ、間寛平が来てしまった。もうどうしようもない、体の上を知らない芸人に走られるしかない。そう思ったがどうも様子がおかしい。体の上を動くのは一人ではないような気がする。そう思って足の方に目を向けると黄色い全身タイツに身を包んだ何かがいっぱいいた。ストレッチマンだ。きっとストレッチパワーに引かれて集まってきたのだろう。私は胸をなでおろすと、集まったストレッチマンをすべて捕まえてメルカリで売り払った。760円で売れた。

タガメを食べる日

今日はタガメを食べる日です。

なぜなら

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浅倉透が「梨の味するの?」って言っていたことを、今、思い出したから。

 

LOFTで売ってました

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リトルグレイの肌の色と全く同じ色の袋ですね。

 

開けたら中にも袋が入ってました

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外側の袋の中を嗅ぐと、「梨だよ」と言われたら梨かもねと思うかもしれないにおいがしました。期待が高まりますね。

 

これが内側の袋の中身、リュックに入れたまま映画見に行ったりしたので頭がとれちゃってました

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ちなみに内側の袋の中はクレヨンみたいなにおいがしました。

 

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食べたらより「虫だね~」っていう見た目になります

 

肝心の味ですが油分とうま味が強く感じられます。うまいクレヨンみたいな味でした。

梨の味ではありませんでしたね、梨色のクレヨンの味ではあるかもしれないけど。

 

茹でた後に乾燥させているから梨の味が消えてうま味が強くなっているんですかね、知らないけど

梨嫌いだから、梨の味しなくてよかったのかもしれないですね

 

あと同じぐらい見た目がグロいエビのほうが美味い。みんなエビを食え。

あるあるによるマッチポンプ

コンビニにでも行こうかと外に出るとキンモクセイの香りがフワッと私を出迎えた。気がつけばもう十月だ。近所の庭にキンモクセイが植えてあるらしく毎年秋になると外に出るたびにキンモクセイの香りに包まれるのでお得な気分になる。

キンモクセイと言えば秋の香りの代表格であるが、私が始めてキンモクセイの存在を知ったのは「秋あるある:キンモクセイの香り漂いがち」としてである。そのため、キンモクセイという香りが特徴的な花が存在することは知っていてもどんなにおいなのかは知らなかった。しばらくは気にしていなかったが、ふとそのままでは世間に仲間はずれにされている気がしてむかついたので、町でキンモクセイを探して香りを確かめるという作業をしたことがある。予想していたにおいとは違ったがいいにおいだった。たしかに特徴的で秋の風物詩になるのもうなずける。

キンモクセイにまつわるあるあるとしてもう一つ、「トイレ芳香剤のにおい」というものがある。しかし今まで私はキンモクセイのにおいの芳香剤を置いたトイレを使ったことがないので、そういうあるあるがあるという知識でしか知らない。この先、キンモクセイの香るトイレに入った時にこの知識が実体験を伴うあるあるとなるのだろう。私はインターネットで見たあるあるによって世界の認識を行っている。

そんなことを考えながらコンビニに向かっていると脇にイチョウが植えられている道にさしかかった。くっせ~、ウンコのにおいだ。これもまた”秋の風物詩のにおいあるある”「銀杏のにおい、ウンコ」だ。トイレの芳香剤の香りとして名高いキンモクセイの香から一転、ウンコのにおいになるとは。便所のマッチポンプかいッ!

勘ではり治療をやった日

ここのところ床に座る生活が続いているので腰やら肩やらが凝ってきました。部活で定期的に運動をしていた高校生の頃には無かった悩みです。ストレッチとか軽い運動とかが一番効果的なんだろうけど、一発で治る方法ないかなぁ。ということで今日は勘ではり治療をしました。

家にある縫い針やまち針、ピンバッチなど針状のものすべてをお湯の沸いた小鍋に突っ込んで煮沸消毒します。5分ぐらい煮込んで菌を軒並みぶっ殺したところでさっそく身体に刺していきます。

まずはコリのひどい肩甲骨あたりに刺してみました。するとみるみる肩が軽くなります。心なしか猫背も伸びて自信に満ちあふれた若者のシルエットになった気がします。

これは効果があるぞ、と腰や背中、足の付け根など日頃のカスみたいな姿勢のせいで凝り固まった筋肉を勘でほぐしていきます。

背中の真ん中のほうの、手の届きにくいところにもはりを刺そうと頑張って背をそらしてくと、だんだん抵抗がなくなって、すんなり手が届くようになります。「めちゃくちゃ効果あんじゃんか」と調子に乗って刺し続けているうちにふと気づきました。いくら何でも身体が柔らかすぎる。さすがに背中側から足の裏にはりをさせるのはおかしい。そう上半身を元に戻そうとしても、動きません。背中が反りきったまま戻らなくなってしまいました。それどころか手さえも足を掴んだまま動く気配がありません。私の身体は円形になったまま固まってしまいました。

立ち上がれないので転がるしか移動方法がないのですが、転がってみるととても素早く動けます。まるでこれが本来の移動方法かのようです。

すさまじい速度で転がりながら病院に駆け込むとギリギリ診察時間に間に合いました。お医者さんは私を一目見るなり

「ああ、輪入道になるツボを押しちゃったんだね」

といいました。

どうやらそういうツボが人体にはあるみたいです。

みなさんも気をつけてください。