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浅倉透がプロデューサーに対して抱く感情の正体

pdf形式でツイッターにあげた文章です

 

浅倉透がプロデューサーに対して抱く感情の正体

The true color of Toru ASAKURA’s feelings toward the producer

 

Twitter ID: @ichiha_chaofan

クアトロ加藤
Quatre Kato

 

Key word: 浅倉透 noctchill  透-P関係論

 

 

――要旨――

 浅倉透は自信の所属する283プロダクションのプロデューサー(以下P)へ並々ならぬ好意を抱いていると解釈されることが多い。彼女がPへ好意を寄せていることは否定しがたいが、彼女がPへ向ける気持ちは単純な恋慕だけではなく、自身に目標を与えてくれる人、ともに退屈だった人生を生きる価値あるものに変えてくれる人としての敬愛の念が存在する。本論文は浅倉透がPに対して抱く気持ちの正体を彼女がW.I.N.G.を優勝するまでの軌跡に注目しながら解釈するものである

 

 

1.はじめに

浅倉透はPに恋愛感情を抱く人物(いわゆるPラブ勢)と捉えられることが多い。もちろん浅倉がPのこと恋愛的に好きであることを否定することはできない。それは一部のコミュの内容や雰囲気が示すとおりである。しかし、浅倉がPに抱く感情は恋の一言で表すことができるほど単純ではない。つかみ所のない彼女の言動を丁寧にかみ砕くことで浅倉透という人物に近づくことができるはずである。本論文は浅倉がPに対して抱く感情をテーマにW.I.N.G.編のシナリオを読み解くものである。

 

2.本文

ジャングルジムは浅倉透のW.I.N.G.編共通シナリオにおいて非常に印象的な存在である。浅倉は度々ジャングルジムの夢を見ており、夢の中においてジャングルジムは外から眺める分にはたいしたことないが、ひとたび足をかけると頂上が見えなくなる、そして登り始めたら降りることができないという特徴を持っている。そのジャングルジムに対して浅倉は「長いな~」という感想を抱いている。しかしただのジャングルジムに対して「長い」という感想を抱くのは不自然であり、ジャングルジムは何かのメタファーであると考えるのが自然である。シーズン1のコミュで浅倉は「人生って長いな~」や「人生長すぎるもんね」という発言をしており長いものとして人生が登場している。また、登り始めたら降りることができないという夢の中のジャングルジムの特徴も生を受けたらなかなか終わることができないという点で人生と重なる。ただし、夢の中のジャングルジムは頂上、すなわち終着点が見えないものであり、ジャングルジムが象徴する人生は単に生きる時間としての人生ではない。時間としての人生には死という絶対的な終着点が存在しているからである。そもそもなぜジャングルジムが浅倉にとって重要な存在であるかというと、幼少期になかなか登頂できなかったジャングルジムに、恐らくPとみられる男子学生と一緒に挑み、その時初めて登頂に成功したという経験があるからである。何度も夢に見ることから、この経験は彼女にとってかなり強烈な成功の原体験であると考えられる。このことから浅倉にとってのジャングルジムは「目標のある人生」の象徴であると考えられる。また、夢の中のジャングルジムは端から見る分にはたいしたことないものとして浅倉の目に写るが、ジャングルジムが目標のある人生の象徴であるとすると彼女には誰かの人生を見て、目標を達成する人生を簡単なものだと感じる機会があるということである。これは彼女の趣味である映画・ドラマ鑑賞が関係していると推測される。浅倉透のサポートSR『かっ飛ばし党の逆襲』において、行き詰まったドラマの登場人物がバッティングセンターに気分転換しに行く展開を見て、自主練中に同じく行き詰まった浅倉はドラマの登場人物と全く同じ「かっとばそう」という台詞とともに樋口を連れてバッティングセンターへ行く展開がある。このように浅倉には見た作品に影響を受ける節があり、目標を持ち紆余曲折ありながらもそれを達成する物語の主人公を見て目標のある人生が簡単に見えたのではないだろうか。『十個、光』の「1コ目」においても彼女が目標を持てていない描写がある。浅倉は雑誌の企画として「一生のうちにやりたい10のこと」について考えるがその答えとしてあげるのは「ブラウス欲しい」や「アイスコーヒー飲みたい」など将来のことではなく今やりたいことである。それに対してPがきちんと考えるよう促すと彼女は「でも、埋まらないし」と答える。このときの彼女の返答が「やりたいことだし」ではないことに注目したい。彼女は未来が見えていないのではなく見ている上でやりたいことがないのだ。同コミュで浅倉は「今やりたいこと、今大事にしなきゃ」と言っており彼女が本心から今を大事にするゆえに「一生のうちにやりたい10のこと」として今やりたいことをあげたという考え方もある。しかし、その後に「明日、宇宙人とかが攻めてくるかも知れないし」と続けている。今を大事にしなくてはいけない理由として交通事故で死ぬかも知れないというような現実的に起こりうるものを挙げないのはもちろん茶化しや屁理屈の線もあるが、今を大事にするということが彼女の行動原理に深く刻み込まれていないからとも解釈できる。また、このコミュにおいて選択肢「――」を選ぶと浅倉は「この質問の答えを見つけること」をやりたいこととして挙げる。このことからも彼女が人生の目標を欲していることがわかる。浅倉はアイドルである事に不満はなくオーディションに落ちたときにはショックを受け、DVDを見てアイドルについての研究もきちんと行っている。彼女にとってアイドルである事はPと一緒にいるための手段としてだけではなく、目標となっている。「嬉しいから、こうやって出会えたこと」という彼女の言葉にはもう一度自分に目標を与えてくれる、一緒に頑張ってくれる人としてPと再開できたことを嬉しく思う気持ちが現れているのだ。

 

 『回るものについて』でPと追いかけて追いかけられる関係となったことを喜んだり『十個、光』の「4コ目」において経費で落とすべきところを割り勘しようとしたりと浅倉はPと対等な関係であろうとする。これは浅倉がPに一緒に登ってくれる人、すなわち一緒に目標を向かって人生を歩んでくれる人であることを望んでいるととれる。一方で『十個、光』の「3コ目」でPと浅倉が一緒に見ている映画にキスシーンがあり、Pが親と一緒に見ているときキスシーンがあると気まずいと言うと、浅倉は「親ならもう少し気まずくないよ」と答える。「4コ目」では打ち合わせの食事代を奢ってもらってばかりで悪いという浅倉に対してPが「仕事上のもので経費だからワリカンにはできない」と言うと彼女は「次はワリカンね」と返す、これは、次は仕事じゃなくてプライベートで来たいという発言ととれる。これらは一緒に人生を生きる相棒に向ける言葉というよりは恋慕の対象へ向ける言葉として見るほうが自然である。このように浅倉がPに対して抱く感情は一口に言えないものである。W.I.N.G.優勝後Pに「私も気持ち伝えるのに時間かかりそうだから」と伝えることからもわかるように彼女自身もその正体を掴み切れていない。

 

 

終わりに

 先日追加されたG.R.A.D.編については筆者がきちんと理解出来ていない部分があるので今回は解釈の対象から外した、これについては今後の課題である。とはいえ、今回示した「浅倉透は目標のある人生を求めている」という解釈で矛盾はなかったと思われる。余談だがG.R.A.D.編で浅倉がランニングしているときの息づかいを録音し、上手くつなぎ合わせることで浅倉透と一緒にランニングしている気分になれる音声を作ることができる。実際に筆者が聞きながらランニングしてみたところ、たしかに透と一緒にランニングしている気分になりランニングのモチベーションが上がるが、一方でペースが乱されるので呼吸音の間隔を適宜調整していく行程が必要になるだろう。