プーアル茶の悪魔と契約を交わしました! 2021/03/03
喉が渇いたのでお茶を飲もうとしたとき、口からこぼれてそのしずくがテーブルに落ちました。すると、そのしずくが宙に浮きどんどん体積が大きくなっていき、人の形をかたどりました。その様子を呆然と見ていると、どこからともなく声が聞こえてきます。声の発せられた方向さえもわからないのに、たしかにこちらに向けられていると確信できる声です。
「我はプーアル茶の悪魔。喚び出した者に格別の繁栄を与えよう。無論、それに見合った代償を払ってもらうがな」
「代償、それは一体......」
「そうさな、汝の有する空間、そして血をいただこうか」
「それで、私は何を得られるんですか?」
「永遠の安全と富を」
命ではなく血を指定する辺り失血死する量をとられる訳ではなさそうだ、ならば献血感覚で代償を払うのもありかもしれない、噂によると献血は身体にいいらしいし。契約、悪くない。
「その話、乗りましょう」
「では」
そう言って悪魔が突き出した手にはいつの間にか羊皮紙が握られていた。
「契約書にサインをいただこう、血でなくインクでもかまわないとも」
契約書には細かい字でびっしりと条項が書き込まれている。契約にうるさいという悪魔のイメージは本当らしい。ゲームアプリで契約書や注意事項を読み飛ばすことには慣れている。読み飛ばして一番下の署名欄にサインした。
悪魔は契約書を丸めると「契約はここに完了した、我の力上手く使うといい」と言い残して跡形もなく消えてしまった。血がとられた感覚はしないが、かといって財宝が置いていかれたわけでもない。新手の詐欺かと訝しんでいたところでインターホンが鳴った。
「お届け物でーす」
ずいぶん大きな段ボールを受け取り、開けてみると中身はウォーターサーバーだった。誤配送かと思い宛先を確かめると間違いなく私の住所でした、そして差出人は空欄です。(そんなことあるぅ?)と思いウォーターサーバーを取り出してみたところ、一枚の紙がはらりと床に落ちました。拾い上げてみると、それは先ほどの契約書の写しでした。赤くまがまがしい紋章がすかしで入っています。それと同じ紋章がウォーターサーバーにも入っています。
「清潔な水が貴重だった時代の悪魔だったのかなぁ」なんて言いながら契約書を見直してみると『月額6500円を支払うこと』という一文があります。
新手の詐欺でした
みなさんも気をつけてください。